●あらすじ

1945年8月6日午前8時。

小学生たちが水泳大会のため西正寺の庭に集合していた。
空は青く山の緑は美しく、川のせせらぎの音が聞こえるいつもの夏の朝だった。
B29米軍爆撃機が空を飛んでいっても気にせず、子供たちは笑い声とたて、いつものように元気に走り回っていた。

「あれ?今何か光ったね。」
その言葉と同時にすごい爆音が轟いた。そして、突然の大雨。子供たちは訳もわからず、夢中で西正寺の縁側や草むらのかげに身を隠す。そして誰に言われたのでもなく全員家路についた。帰る途中、山の間からキラキラした美しいものが雨と一緒に降ってきた。みるとそれは焼け焦げた畳や枕の破片だった。
山の向こうには大きなキノコ雲が立ち上っていた。

夕暮れ時になり、広島の市街地から逃げてきた人たちがやってきた。水を入れたサイダービンだけを抱えて逃げてきた女。村の知り合いがいて助けを求めてやってきた人達。気が狂ってしまった女。死んだ赤ん坊を背負ったまま歩いている女。
「ここには水がある!!」「助かるぞ!」
みんな助かった喜びに浸って水を飲んだ。
 
時は流れて、広島の街も活気を取り戻しつつあった。
生き残った喜びの中、力強く生命力溢れる生活をおくる若者たち。
そんな中で一人の少女が原爆症で倒れる。
生き残ったと喜んでいた一人だったのに回復の兆しのないまま少女は死んでしまう。

被爆して死んでしまう者と同じように被爆したのに生き残る者、様々な人生を見つめながら60年たった今も生き残っている人達はふと思う。
なぜ自分は生き残ったのかと。

小さな罪悪感に似た気持ちを胸の奥底に抱きながら生きてきた作者が自ら詩を朗読し始める。